Ri.Night Ⅳ
「……なぁ、十夜。お前、本当に言わないつもりか?」
「……あぁ」
「でも凛音は怪我の事知ってるんだろ?」
「………」
“傷”
それは獅鷹との喧嘩の時に負った傷のこと。
凛音は獅鷹と鳳皇の間にあった事を何も知らない。
けれど、獅鷹が十夜に傷を負わせた事だけは知っている。
迂闊にも凛音に見られてしまった十夜と、凛音が獅鷹総長の妹だとは知らずに教えてしまった煌。
二人は心の奥底で不安を抱えていた。
獅鷹と鳳皇の間にあった事を絶対に凛音には知られてはいけない。
もし知られたら──
「──凛音には上手く言っておく」
「上手くってお前……」
「アイツにはもう哀しい想いをさせたくはない。
だから煌、お前も獅鷹には言うな」
「……分かった」
──また一つ、真実が闇の中へと消えた。
“あの喧嘩”で十夜が怪我をした事は鳳皇の人間以外誰も知らない。
それは、獅鷹総長、貴音でさえも。
-客観的視点 鳳皇side end-