Ri.Night Ⅳ
64.謎の男
────…
「悪い。待たせた」
鳳皇メンバーに帰るよう指示しに行った十夜があたし達の元へと戻ってきた。
鳳皇のメンバー達は「またねー!」と言って手を振りながら先に帰っていく。
それに手を振り返し、あたし達も歩き出した。
「──ちょっと待って」
歩き出した足を止め、目の前にいる中田を見据える。
目が合った中田は“いつも”の中田だった。
とてもじゃないけど、さっきまで絶望の色を纏っていた人物には見えない。
足を止めた事に気付いたのか、中田がゆるりと視線を上げ、あたしを見た。
交わる視線。
互いの間に沈黙が訪れる。
「……もう会う事はないな」
先に口を開いたのは中田だった。
抑揚のない声とは裏腹に、あたしを見つめるその瞳は少しだけ哀しみを帯びている。
「……もう鳳皇に危害を加えたりはしないんでしょ?」
「………」
そう問いかけても中田は何の反応も示さない。
けど、真っ直ぐ見据えるその瞳が肯定を表していた。
「なら、会っても話しぐらいはするよ。鳳皇と獅鷹に害がなければ別にいい。
あたし、そういう事はあんまり根に持たない方なんだよね。終わった事はスパッと忘れるの」
「ブハッ!確かに忘れてそう!!」
「でも食べ物の恨みはいつまで経っても忘れねぇよな!」
「陽!そんなこと暴露しないでいいからっ!!」
吹き出す彼方をジロリと睨みつつ、陽の口を手で塞ぐ。
「んー!!」
苦しさから逃れようとジタバタもがく陽に「お口チャックね!?」と釘刺していると、
「……クッ」
背後から笑い声が聞こえてきた。