Ri.Night Ⅳ
誰だ笑ってる奴は、と勢いよく振り返ると、
「………へ?」
なんと、笑っていたのは中田で。
大笑いとかではないけど、小さく肩を震わせて笑っていた。
それは何かを企んでいるような笑いでもなく、馬鹿にしているような笑いでもない。
正真正銘、純粋な笑みだった。
「中田?」
「お前はそのままでいろ」
「え?」
「これからも変わらずそのままでいろ」
「中田……」
初めて見た中田の穏やかな微笑みに目を見開く。
けど、それも一瞬で。
その後つられるように笑みを返した。
「行け」
「……中田はどうすんの?」
「俺はまだする事がある」
する事?
あぁ、そういうこと。
ちらりと横目で後方を見る中田に察しがついた。
中田の後方には獅鷹のやられた男達が転がっている。きっとその後始末だろう。
「じゃあ、あたし達は行くね」
「あぁ」
そう返事をした時にはもう、中田はあたしを見てはいなかった。
あたし達に背を向け、仲間達の元へとゆっくりと歩いていく。
「………」
あたしは少しの間、中田の後ろ姿から目が離せなかった。
もう、中田と関わる事はないんだろうな……。
中田を見つめながら、心の中でそう小さく呟く。
──半年も続いた闘いの幕が、今、静かに下ろされた。