Ri.Night Ⅳ
「中田、ここで待ってて」
十夜の手を引きながら視線を落とし、中田に向けてそう言うと、
「俺も行く」
中田は苦痛に顔を歪めながらも膝を立てて立ち上がろうとした。
「馬鹿!そんな身体で行ける訳ないでしょ!」
そんな中田の肩をポンッと押し、無理矢理その場に留めさせる。
「………」
「そんな顔しても無駄だから」
尻餅をついた中田の恨みがましい目がチクチクと突き刺さる。
……ってこんな事してる場合じゃないのよ!
早く行かなきゃ隣の工場からアイツ等が出てくる。
煌達が捕まえてるかもしれないけど、もしもの時の為に出入口で待ち構えなきゃいけない。
アイツ等は逃がしちゃいけない奴等なんだ。
逃がしたらまた何かしらのトラブルが生じる。
きっと。ううん、絶対。
「中田、取り敢えず行ってくるから大人しくしてて!」
「オイッ!」
「マテッ!!」
「……っ」
しつこく立ち上がろうとする中田にビシッと手のひらを向けると、なんとそれは効果絶大で。
言葉の通り、飼い主に“待て”をされた中田は従順なわんこのようにピタリと動きを止めた。
と言うよりも固まった、と言う方が正しいのかもしれない。
「あたし達が戻って来るまで動いたら駄目だからねっ!」
そう言って十夜の手をグイッと引っ張る。
十夜はと言うと、何故か哀れんだ目で中田を見ていた。
「十夜、早く行こう!」
もう、本当に早く行かなきゃヤバイんだって。
“待て”とか言って遊んでる場合じゃないよ。
いや、遊んでる訳じゃないけど。