Ri.Night Ⅳ
「りっちゃんってお嬢だったんだなー」
「そりゃあのマンションに一人暮らし出来る筈だよ」
未だ家を見上げている陽と彼方が溜め息混じりにそう呟いた。
「違う違う。お嬢はうちのママだよ。あたしはただのサラリーマンの娘」
勘違いしている二人にパタパタと手を振って苦笑する。
あたしはホントにただのサラリーマンの娘。
お嬢と呼ばれるのはママの方が相応しい。
だって、ママは正真正銘のお嬢様だから。
あたしも詳しく聞いた事ないからよく分かんないけど、おじいちゃんが結構大きな会社の会長さんらしくて。
だからと言ってパパは婿養子とかではなく、おじいちゃんとは全く関係のない会社で働いている。
とは言ってもおじいちゃんの会社とは取引きしてるみたいだけど。
おじいちゃんの会社はママのお兄さんが継いでいて、貴兄に跡継ぎが回ってくる事もない。
ママに政略結婚しなくて良かったの?って聞いた事あるけど、おじいちゃんがしなくていいって言ったんだって。
子供に政略結婚なんてさせない。会社は自分の力で大きくする、と言うのがおじいちゃんの口癖らしい。
そのお陰でママはパパと結婚出来たのよってママは嬉しそうに言ってた。
「まぁ、お前はお嬢様ってガラじゃねぇもんなぁー」
「失礼な!こんなにおしとやかな女の子他にどこにいる!」
「はいはいはいはい」
車から降りた煌が勝手に言ってろよとでも言いたげに鼻で笑い、冷ややかな目を向けてくる。
……ッキィー!ムカつく!
後ろから飛び蹴りでも食らわせてやろうか!