Ri.Night Ⅳ
「りっちゃんりっちゃん、顔ヤバいから!」
「むっ」
いけないいけない。煌の相手をしたら女じゃなくなる。
あたしはおしとやかな乙女だもんね!
「凛音?」
「貴兄!」
背後から聞こえた声に振り返ると、貴兄が此方に向かって歩いてきていた。
貴兄の後ろには優音達もいて。
どうやら皆揃ってお出迎えに来てくれたらしい。
「おかえり。遅かったな」
「ただいま!ちょっと色々あってね」
小走りで駆け寄り、いつものようにぎゅうっと抱きつく。
「色々?ってお前、なんか汚れてないか?」
そう言いながらあたしの頬をクイッと拭ってくれる貴兄。
「え?汚れてる?」
拭うぐらいだから結構汚れてるのかな。
手の甲でゴシゴシと擦る。
「コラ、あまり擦るな」
「だって汚れてるの嫌なんだもん」
擦る手を止められ、代わりに貴兄の指が優しく頬に触れた。
「取れた?……ってぇぇぇえ!?」
突然後ろに倒れる身体。
倒れたかと思えばすぐにポスンと受け止められて。
一体何事!?
「……って、十夜?」
背中を預けたまま上を見上げると、そこには十夜の整ったお顔があった。
え、なんであたし引っ張られたの?