Ri.Night Ⅳ
「皆、上がって。んで、そこのドアを開けたらリビングだから」
そう言うと、皆は「お邪魔しまーす」と言って靴を脱ぎ、言われた通りにドアに向かって歩いていく。
あたしはと言うと。
「十夜?どうしたの?」
一歩も動こうとしない十夜にそう問いかけ、下から覗き込むように見上げた。
「……お前は」
「うん?」
「此処で育ったんだな」
十夜?
ずっと上を見上げたままの十夜。
特に何処を見ている訳でもなく、ただボーッと家の中を見つめている。
「十夜……」
無表情にも見えるその横顔には、身近な者にしか分からない程の小さな笑み。
十夜が今何を想っているのか分からないのに、その笑みを見て何だか嬉しく思ってしまった。
十夜と同じように吹き抜けになっている玄関ホールを見上げる。
「……あたしはこの家で皆に支えて貰いながら育ったの。パパやママ、貴兄と優音、そして嵐ちゃん達。皆で怒ったり泣いたり笑ったりして共に過ごしてきた」
「………」
「想い出が沢山詰まった家」
「………」
「これからはその想い出の中に十夜達との想い出が入っていくの」
その言葉で十夜の視線があたしに向けられた。
あたしも十夜を見上げる。
「あたし達は離れないんでしょ?だったら十夜達もこの家の想い出の中に刻まれていくよ」
ずっと一緒に居るってそういう事だから、と言って目を細め、ニッと笑ってみせる。