Ri.Night Ⅳ

最後の言葉は十夜の温もりに吸い込まれていった。


額から伝わる十夜の温もり。


その温もりを感じた時、漸く自分が十夜に抱き寄せられたのだと理解した。


「……っ、十夜……」


鼻先を掠める十夜の香水の香り。

大好きな香り。


この香りに包まれるだけで心が落ち着いていく。


だけど、同時に泣きたくもなる。


あたしはこの香りに包まれた後、何度も“別れ”を経験した。


何度も何度も。


その度辛かった。哀しかった。


もう、あんな思いは二度としたくない。


だから、もう離れないように。


ううん、離さないように、十夜の服をギュッと強く握り締めた。



「十夜、大好き……」

「……っ」


そう小さく呟くと、後頭部を覆う十夜の手にグッと力が籠った。





「──ハッ。すっげぇ破壊力」

< 237 / 476 >

この作品をシェア

pagetop