Ri.Night Ⅳ

「大好き……」


そう呟くと、耳元で囁いていた熱がそっと離れ、代わりに大きな手があたしの両頬を覆った。


コツンと重なる額。

さらりと落ちる十夜の前髪が少しくすぐったい。



「……俺も」


「……っ」


「好きだ」


「……とぉ……っ」



数センチ先で囁かれる愛の言葉。


その言葉にもう涙を堪える事なんて出来なかった。



「……ふ……っ…」


「……好きだ」


「十夜……」


「俺の方がお前よりも先に……」



──好きだった。


そう小さく囁かれた言葉はあたしの口内へと消えていった。


「……ん……っ」


深い深いキスに犯されていく。


「とぉ……」


「凛音……」


息継ぎの合間に互いの名を紡ぎ、また塞がれる。



「十夜……」


聞こえるのは耳を塞ぎたくなるような淫らな水音と、身体を掠めていく夜風の音だけ。


薄く目を開けると、風に靡かれて露になった漆黒の瞳と目が合った。


目眩がする程綺麗な瞳。

月明かりに照らされ、更に妖艶に輝く。
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