Ri.Night Ⅳ
「……お前」
十夜の胸元を思いっきり引き寄せ、チュッと頬にキスをすると、十夜は目を開かせて驚いていた。
けれど、それもほんの一瞬。
瞬時に意地悪そうな笑みに切り替えた十夜は、離れたあたしを再び引き寄せた。
そして、後頭部に回した手を離さないとでも言うように髪の毛の間に滑り込ませる。
「やるんなら口にしろよ」
十夜の唇まで数センチ。
寸前で止めた十夜はやっぱり意地悪で。
「む、り……」
けど、触れた唇は今までで一番優しかった。
「……っ、」
カタンとベンチが静かに音を立てる。
その音と共に身体が仰け反るように後退し、背中がベンチの背凭れにあたった。
左足付近に感じる重み。
ベンチが揺れる音に十夜がベンチに右膝を乗せたのだと分かった。
「十夜、待っ……」
覆い被さるように迫ってくる十夜の胸元に手をあててストップをかけたけど、
「けしかけたお前が悪い」
そう言って十夜は止まってくれなかった。
うっすらと目を開けると、視界に映ったのは意地悪だけど優しい妖艶な笑み。
貪るようなキスにまた酔い痴れる。
「また泣く」
「だって……」
嬉しいんだもん。
十夜に“好き”と言えたことが。
十夜に“好きだ”と言われたことが。
十夜の彼女になれたことが。
嬉しすぎて仕方ないの。