Ri.Night Ⅳ
「……十夜、ありがとう。待っててくれてありがとう」
「凛音……」
「いっぱい……いっぱい傷付けてごめんね。本当にごめっ……」
「謝らなくていい。俺もお前を沢山傷付けたから」
「十夜……」
意地悪な笑みから一変し、徐々に陰っていく十夜の瞳。
その瞳を見ていられなくて、首を左右に振りながら十夜の頬にそっと両手を伸ばした。
手のひら一杯に感じる十夜の温もり。
甘い感情が心にじんわりと染み渡っていくような気がした。
「十夜は何も悪くないよ。全部あたしが招いた事なんだから。だから十夜が謝る必要なんてない」
ね?と言って小さく笑うと、十夜は頬に添えているあたしの両手をそっと包み込んだ。
手のひらと甲、両方から感じる十夜の温もりにとくんと小さく鼓動が跳ねる。
「もう不安とかないか?」
「不安……?」
その言葉を聞いてすぐに気付いた。
十夜は遥香さんの事を言ってるんだって。
十夜はあたしが遥香さんを見て泣いた事をまだ気にしているんだと思う。
正直、不安じゃないとは言えない。
十夜の気持ちは分かっていても遥香さんはまだ十夜を好きだから。
それだけで不安になる。
……でも。
「十夜が傍にいてくれるなら……」
きっと、大丈夫。
「あぁ、傍にいる。だからお前も俺の傍にいろ」
「……うん、いる。十夜の傍にいる」
ずっと、ずっと傍にいるから。
だから……。
「もう──」
「もう離れるな」
「……っ」