Ri.Night Ⅳ
そう。あたしが勝手に思い込んでいただけなんだ。
それなのに、哀しみと怒りが心中でグルグルグルグルと渦巻いて、遊大に全てをぶつけたくなった。
分かってる。分かってるんだ。
この感情は自分勝手なモノだって十分分かってる。
自分と同じ考えを相手に求めるのは間違っているんだということも分かってる。
遊大も獅鷹の人間。自分の感情だけでは動かない。
“これ”は遊大が決めた事なんだ。
あたしがとやかく言う権利はない。
けど、あたしは抗争を止めたい。
どうにかしてこの抗争を止めたい。
もし今、『これから鳳皇と関わる気はない』と貴兄に言えば、抗争は止まるかもしれない。
けど、もしまた十夜があたしの元へ来たら、きっとまた同じ事が起こる。
結局繰り返されるんだ。
「慎、凛音を頼む」
「はい。……凛音、こっち来い」
「ヤダッ!!」
遊大と一緒に来ていた慎が、優音の代わりにあたしの両肩を掴んだ。
優音の時と同様、上半身を荒々しく振り回し、必死に抵抗する。
けど、力ではやはり男には敵わない。
大きな手があたしの身体を無理矢理押さえ込み、引き寄せた。
一歩、二歩、と後ろに下がるにつれて掴んでいる腕が伸びていく。
ピンッと真っ直ぐ突っ張った時、目を逸らしていた貴兄があたしの手首を上から覆う様に掴み、そっと引き離した。
「……すぐ戻ってくる。大人しく待ってろ」
「貴兄!!」
もう一度貴兄の服を掴もうと手を伸ばすけど、貴兄はそれを見て見ぬフリして背を向けた。