Ri.Night Ⅳ
「中田、行くぞ」
「ちょっと待て」
中田はあたしに目を向けると、ポケットから携帯を取り出して、まるで見せつけるかの様に電話をし始める。
……何?
そう思うや否や、あたしを見つめていた中田がうっすらと笑みを浮かべた。
そして──
「獅鷹を残してお前等は中へ入れ。Dはそのまま待機だ。……あぁ。シンに言っておけ。お前等の出番はないだろう。鳳皇は俺等だけで倒すってな」
目を細め、愉しそうに口端を歪めながらそう言い放った。
──中田。
その笑みに悔しさが込み上げ、ギリッと唇を噛み締める。
「……凛音、お前を奴等には渡さない」
パタンと携帯を閉じながら、射る様な瞳であたしを見据える中田。
先程とは違い、真剣な表情。
時に馬鹿にした様な笑みを浮かべ、時に真剣な表情で見つめる。
コロコロ変わる中田の表情は、本心が全く読めない。
「──戻るのを楽しみに待ってろ」
笑みを浮かべ、立ち去ろうとする中田。
このまま行かせたら中田は鳳皇と──
「……っ、待って……!」
そう思った時にはもう、中田を呼び止めていた。
叫び声と共に静かに止まる足音。
それと同時に向けられた視線。
再び絡み合う。
あたしを見つめるその瞳は特に何かを語る訳ではなく、ただ真っ直ぐあたしの瞳を射るだけ。
「………」
その視線にグッと言葉を飲み込んだ。
続きが……出てこない。
プライドが許さなかった。
例え“お願いだからやめて”というたった一言だけでも、中田に頼むのだけは耐えられなかった。
……中田になんて、悔しくて言えない。