Ri.Night Ⅳ
「……っ、貴兄!優!!」
中田に言えないのなら、二人に言うしかない。
他人事のように背を向けている二人に向かって力一杯叫ぶ。
「貴兄!やめて!!」
「……っ、凛音!!」
「貴兄!!」
……お願い。お願いだから行かないで。
鳳皇と真っ正面から勝負したら、きっと軽い怪我では済まされない。
もし、大きな怪我でもしたらあたしは、
あたしは……!
「貴兄!優!!」
二人の元へ行こうと足を一歩前へ突き出し、両腕に力を込めた。
だけど、どんなに頑張っても慎に押さえ付けられていて、前へは進めない。
「貴兄!お願いだからやめて!貴兄!」
「……っ凛音、無駄だ!」
「慎、離して!!……貴兄!お願い行かないで!貴兄!!」
暴れるあたしの二の腕に慎の指が容赦なく食い込んでいく。
骨まで響く程の痛み。
だけど、興奮状態に陥っているせいか、それほど痛みは感じない。
それよりも。
それよりも、胸の痛みの方がずっとずっと痛い。
痛くて痛くて痛くて。
このまま張り裂けるんじゃないかって思うほど痛い。