Ri.Night Ⅳ
「行くぞ」
「うん」
またあとで、と零くん達に手を振って、階段を上がって行く。
すると、見えたのは幹部室のドア。
離れていたのはたった一ヶ月なのに凄く懐かしく感じて。
緊張する……。
初めてリビングに入った時のような緊張感に襲われる。
十夜に先に入るよう顎で促され、リビングに一歩足を踏み入れる。
すると、ふわりと懐かしい香りが鼻先を掠め、あぁ、戻ってきたんだ、と胸が熱くなった。
一ヶ月前と少しも変わっていないリビング。
皆で談笑していたソファーもご飯を作っていたキッチンも。
ベッドルームのドアも愛する人が座っていた特等席も。
何もかもそのまま。
……帰ってきた。
帰ってきたんだ。
此処にまた帰ってこれた。
「何ボーッとしてんだよ。早く行け」
「わっ……!」
「ちょっと煌、押したら駄目だろ!……凛音ちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
壱さんに支えて貰い、靴を脱ぐ。
「だからボーッと突っ立ってんなっつーの!」
初めて入ったかのように部屋を見回していると、またもや煌に背中を押された。
少しムッとしたが流石に邪魔だと思い、数歩下がって玄関の前から退ける。
ソファーから少し離れた所で遠慮がちに皆を見ていると、壱さんに「凛音ちゃんいつもの所に座ってて」と言われ、ポンッと肩を叩かれた。
いつもの所……。
その言葉で思い浮かんだのは二人掛けソファー。
目を向けると、そこは当然のように空いていて。
「りっちゃんの席はここだろ?」
「……っ」
まるであたしの心を見透かしていたかのように彼方がそこへと連れていく。