Ri.Night Ⅳ
61.決戦へ
「……凛音、立て」
慎が力を無くしたあたしの右腕をゆっくりと引き上げた。
左肩を支えられ、半分慎に寄りかかる様な形で立ち上がる。
思考が停止状態の今、あたしは慎のされるがままで。
気付けばさっき居た部屋とは違う部屋に居た。
此処、は……?
移された部屋をぐるりと見回す。
さっきの部屋も大概殺風景だったが、この部屋は特にそう感じた。
それもその筈。
椅子が一つしかないから。
他にあると言えば、変な機械と山積みにされた鉄パイプだけ。
此処で一体何をするというのだろうか。
「座れ」
パタンと扉が閉まる音と共に聞こえてきたのは慎の声。
「何、するの?」
今まで人気[ヒトケ]がなかったせいか、少し肌寒い室内。
けど、その気温は今のあたしには丁度良い気温だった。
無音の空間に広がる心地好い空気。
それが上昇した熱を鎮めてくれる。
お陰で物事を冷静に考えられるようになった。
此処からどうやって脱出しようか。
頭の中にはそれしかない。
脱出する方法を探すべく、慎に悟られない様に視線を左右に泳がせると、目についたのはさっきも見た山積みにされた鉄パイプ。
……鉄パイプ、か。
心中でそう呟き、開けられた扉に目を向ける。
見えるのはさっきまで自分が居たであろう部屋。
そして、貴兄が出ていった扉。