Ri.Night Ⅳ
ぶちんと切れてしまった堪忍袋の尾はもう元には戻らない。
『俺がキレる前に消えた方がいいよ?』
そう言ってクイッと首を傾げながら目を細める。
そんなあたしに男達は顔を見合わせ、馬鹿にしたように笑い出した。
「お前がキレた所でどーな──」
『こうなるんだよ』
「……っ!」
あたしの肩へ乗せようとしていた男の手を掴み、そのまま半回転させて思いっきり捻り上げる。
「テメェ……!」
『アンタも相手して欲しいの?大勢の前で恥かきたいんならいいけど』
ギリッと音が鳴る程力を込め、もう一人の男に向かってそう吐き捨てる。
すると男はチラリと周りに目を向け、悔しげに舌打ちをした。
今の状況をやっと把握したのだろう。
周囲にはいつの間にか人だかりが出来ていて、みんなナンパ男達に向けて冷ややかな視線を送っていた。
漸くその事に気付いた男は恨めしげにあたしを見据えると、唇を強く噛み、素早くあたしの手を振り払った。
そして、荒々しい足取りでこの場を去っていく。
珍しい事にナンパ男の捨て台詞である『覚えてろよ!』は吐かれず、思ってたよりすんなりと帰っていった男達。
少し驚いたけど、まぁゴタゴタになるより断然いいかと思って諦めた。