Ri.Night Ⅳ


『妃奈、大丈夫?』


そんな事よりも妃奈の方が先決だ。


妃奈に寄っていき、顔を覗き込む。


すると……。


「リンくん、格好いい……」

『へ?』


妃奈の第一声は何故かそれで。


『ひ、妃奈?大丈夫?』

「ふふっ、今日は黒髪なんだね~」

『………』


全く以て会話が噛み合っていない。


「嬉しい~」と言って頬を赤らめている妃奈にガクッと肩が落ちる。


そんなあたしを余所にキラキラした瞳で見つめてくる妃奈。


くそぅ、可愛いじゃねぇか。


どうやら妃奈はこの姿が気に入ったらしい。


……ったく、心配したのにさ。

でもまぁ笑ってくれてるからいっか。



『妃奈、ご飯食べに行こう!』


フッと小さく笑い、一人キャッキャ言ってる妃奈の手を引いて人混みの中を歩き出す。







それから、妃奈とのデートは何のハプニングもなく進んだ。


十夜達とは絶対行けないような女の子ばかりのこ洒落たパスタ屋さんでランチして、その後はウィンドウショッピング。


自分の分は前みたいに妃奈に頼んでお会計をして貰い、存分に買い物を楽しんだ。


勿論、“リン”用の服も買った。

妃奈がノリノリで選んでくれたお陰で大量にゲット。


リン用の服や小物を物色している時の妃奈はそれはそれは楽しそうで。


「リンくん、素敵……」


なんてうっとりされた時には最早苦笑いしか出なかった。


思わず、優音ごめん…、と心の中で謝っちゃったよ。


前回と同様、両手一杯に買い物袋を下げたあたしと妃奈は満足げにカフェで一服。


時計を見ると、今の時刻は夕方五時過ぎだった。


陽へのお土産もちゃんと買ったし、そろそろお開きにしようかな。
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