Ri.Night Ⅳ
-客観的視点-
遡ること数分前。
「おーおかえりー。どうだったー?」
「問題ない」
「そ、なら良いけど」
帰ってきたのは火皇に行っていた十夜。
遊大の件があってから、十夜は用事が無くても傘下の倉庫に顔を出すようにしていた。
決して傘下を信用していない訳ではない。
だが、何かあったらでは遅い。用心するに越した事はないんだと遊大の件で学習させられたから。
「凛音ならもうすぐ貴音達と帰ってくるぜ」
部屋を見回す十夜に煙草に火をつけながらそう告げる煌。
「チョコ食いてー」
「りっちゃんに頼んだんだろ?もう少し待ってろよ」
「うー、凛音早く帰って来ーい!」
煌の隣では陽がバイク雑誌を真剣に見ていて、その向かいのソファーでは彼方が眼鏡を拭いていた。
壱はと言うと……。
「十夜、貴音くん達さっき向こうを出たって」
携帯を片手にパソコンの画面と睨めっこしている。
壱の言葉に「……そうか」と小さく返事をした十夜はゆっくりと歩き出し、二人掛けソファーへと腰を下ろした。
静かに目を伏せる十夜。
煌はそれを見逃さなかった。
咥えた煙草を指で挟み、口から少し離して含んでいた白煙を静かに吐き出す。
そして──
「何かあったのか?」
神妙な面持ちでそう十夜に問い掛けた。
先程とは違うその固い声色に他の三人も顔を上げ、十夜を見据える。
「………」
四人の視線を受けても尚、未だ顔を伏せたままの十夜。
そのただならぬ雰囲気に空気が一変した。
妙な緊張感が室内を襲う。
「凛音に……“あの事”を言おうと思ってる」