Ri.Night Ⅳ
「“あの事”?ってまさかお前……」
煌の眉間に皺が寄った。
それは十夜の言葉の意味を悟ったからだ。
「あれはお前の意思じゃねぇだろうが」
「……それでも、事実だ」
「………」
十夜は力強い口調に煌は口を噤み、更に眉を引き寄せる。
「十夜、何で急に言おうと思ったんだよ。はるるんに言わない方がいいって言われたんじゃねぇの?」
いつになく真剣な彼方がまるで真意を探るかのように十夜の瞳をジッと見据える。
「……あぁ。あの時は、な」
そう言った十夜は彼方の視線から逃れるように視線を落とし、再び目を伏せた。
そんな十夜に彼方までもが口を噤む。
「……十夜、それどういう意味?」
十夜の意味深発言に眉を潜めながらそう問い掛ける壱。
だが、十夜は足元を見つめたまま何も発しようとはしない。
十夜が応えなければ会話が成り立たない事はこの場の全員が分かっていたから十夜が喋り出すのを大人しく待つしかなかった。
「………」
けれど、その後も十夜からは何も発せられる事なく、ただ時間だけが静かに過ぎていくだけ。
その間、四人は十夜から目を逸らさなかった。
いや、逸らせなかった。
十夜の纏う雰囲気がそれをさせなかったのだ。
戸惑いを含んだ瞳。
強く噛み締められた唇。
微かに震える手。
どれもこれもいつもの十夜ではなかった。
“何”が十夜をこんな風にさせているのか。
何故、十夜は何も言わないのか。
四人には見当もつかない。