Ri.Night Ⅳ
貴音に大まかな事情を話し、凛音に今すぐ待ち合わせ場所へ行くようにと伝える。
一方、十夜は彼方、壱、陽にも指示を出した。
誰が遥香を狙っているのかはまだ定かではない。
だが、今、遥香を狙う可能性があるのは“D”だ。
頭の回転が速い十夜はそれを瞬時に見抜いていた。
だから今、三箇所に配置してある下の者達へと連絡を入れさせたのだ。
奴等に動きがあればすぐに連絡を入れるようにと。
「──行くぞ」
電話をしながら部屋を出る準備をしていた五人は十夜のその言葉で部屋を出た。
「遥香、今から行く。何かあったらすぐに電話しろ。取り敢えず今はそこから動くな」
この状況の中、十夜は冷静過ぎる程冷静だった。
状況を一早く把握し、瞬時に最良の策を練る。
力強いその瞳と口調はまさに鳳皇のトップ、“黒皇”の姿。
「壱、いつものパーキングに停めろ」
「分かった」
今の十夜は先程の十夜とは似ても似つかない。
まるでさっきの姿が幻のようだった。
「十夜、取り敢えず貴音に事情を説明した。アイツ等ももうすぐ此方につくらしい。あと、凛音にも待ち合わせ場所へ行くように伝えて貰った」
「……あぁ」
煌の言葉に十夜の表情が少し解れる。
と同時に、小さく吐き出された溜め息。
その溜め息に隣に居た陽も心の中でホッと安堵の溜め息をついた。
凛音の事も心配だったが、それよりも十夜の張り詰めた空気の方が耐えられなかったのだ。
それ程緊迫した空気が車内に立ち込めていた。