Ri.Night Ⅳ

「何言ってる!お前を行かせる訳ねぇだろうが!」


その叫び声に貴音と話していた煌は途中で会話を止め、運転中の壱はバックミラー越しに十夜を見た。


彼方と陽は隣で食い入るように十夜の横顔を見ている。



一瞬にして切り替わった十夜の表情。


その表情に四人は何も言葉が出てこない。


“絶句”


それが一番当てはまるような気がした。



『十夜!一秒でも早く行かなきゃいけないの分かってるでしょ!?一番早く遥香さんの元へ行けるのはあたししかいないの!!』


凛音もまた悲痛な声を上げていた。


今の姿が“リン”だという事も忘れ、自分の事を“あたし”と言ってしまうぐらいに。


幸いな事に凛音は大通りから外れた所を走っていて、この会話を他人に聞かれる事はなかったけれど。


「……駄目だ。絶対に行かせない」

『十夜!!』

「駄目だ!」



駄目に決まってる。

どれだけお願いをされてもこれだけは譲れない。

絶対に。


焦りで歪んだ十夜の表情がそう言っているような気がした。



けれど。


「十夜!はるるんから!」


そうも言ってられない状況に陥る時もある。
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