Ri.Night Ⅳ
彼方に掛かってきた電話。
それはビルに隠れている筈の遥香からだった。
『彼方くん!?どうしよう!見つかっちゃった!』
彼方が通話ボタンを押した途端、通話口から聞こえてきたのは遥香の焦り混じりの声。
その声に再び緊迫した空気が舞い戻ってきた。
『十夜!遥香さんはあたしと違って喧嘩出来ないんだよ!?それがどういう事か分かってる!?怪我しないように気をつけるから!お願い!!』
「……っ」
凛音の捲くし立てるような説得に十夜の表情が険しく歪む。
「十夜!」
それに加え、隣からは彼方の急かすような呼び掛け。
二人同時に迫られ、十夜は更に窮地へと追い込まれた。
強く握られた拳には手汗が滲み、噛み締めた奥歯がぎりっと鈍い音を立てる。
これが下の者なら迷いなく指示した。
けど、凛音となると話は別だ。
そんな危険な事はさせられない。
十夜の胸中で激しく渦巻く焦りや混乱。
そして、凛音の身に危険が及ぶかもしれないという不安。
それが十夜の決断を妨げていた。
「十夜、凛音に行かせろ」
そんな時、十夜の思考を遮ったのは煌の声。