Ri.Night Ⅳ
勝手に紡がれる冷徹な言葉の数々。
数トーン低いその声色は最早“凛音”の面影すら無い。
いや、声色どころか表情までも完全に冷め切っていた。
少しずつ、確実に“凛音”から“リン”へと変化していく。
「……テメェ、敵だったのかよ」
不意に投げ掛けられたその声に振り返れば、そこにはさっき遥香さんの居場所を教えてくれた男が呆然とした表情で立っていた。
『仲間だって一言も言ってないけど?』
「……っ」
そんなに睨まれてもね。
勘違いしたのはそっちでしょ?
あたしの言葉にカァと顔を赤らめ、悔しそうに唇を噛み締めながら睨みを利かせる男。
余程悔しかったのだろうか。
拳をグッと握り締めた男は、返事をする事なくこちらへ向かって走ってきた。
握られた拳が目の高さで構えられ、あたしの頬目掛けて勢い良く振り下ろされる。
けれど、簡単に殴られてやる程あたしは良い奴ではない。
迫ってきた拳を直前で交わし、素早く背後に回ると首の後ろに手刀を入れる。
「……っ」
グラリと前へ倒れる男。
それを横目で捉えると、直ぐ様右方へと視線を移した。
視界に映ったのは数人の男達。
男が走り出したのと同時にこの男達も此方に向かって走り出していて。
あたしはそれを視界の端で捉えていた。
男に手刀を入れた時にはもう直ぐ傍まで迫ってきていた男達。
直ぐ様体勢を立て直すが間に合わない。
「危ない……っ!」
背後から聞こえた遥香さんの叫び声と共に、男達の拳と足があたしに向かって同時に繰り出された。