Ri.Night Ⅳ
『……っ』
左に一歩移動して蹴りを交わすと、拳を振り上げた男の懐に体当たりをかます。
それによって振り上げられた拳はあたしの頭上で止まり、男はその体勢のまま後ろへと倒れた。
だが、まだこれで終わりではない。
蹴りを交わされた男が新たに攻撃を仕掛けてきたのだ。
『しつこい』
真横から迫り来る拳を視界に捉えた瞬間、その腕に両手を伸ばし、掴んだと同時に投げ飛ばす。
「テメェ……!」
背後から聞こえた数人の男達の叫声。
『──手っ取り早くて良いね。一気に済ませようか』
細められた瞳に映るのは数人の男達の姿。
自然と浮かぶ笑みに軽い興奮を覚えた。
『遥香さん、葵さん、大丈夫ですか?』
ものの数分で男達を倒したあたしは呆然としている二人の元へと駆け寄った。
二人の前にしゃがみ、怪我をしていないか確認する。
うん、どこも怪我してない。
「えっ、と……リンくん、だよね?」
『え?あ、そうです』
“凛音”だとバラしてもいいと思ったけど、こんな所で正体をバラして誰かに聞かれたらマズイと思って言うのをやめた。
別にこんな所で言わなくても後でゆっくりと説明すればいいしね。
そんな事よりも今は雷さんのお店に向かう方が先だ。
「なんでリンくんがこんな所に?」
『ごめんなさい。あとで詳しく話します。先に雷さんのお店へ行きましょう』
そう言って、二人の手を引く。