Ri.Night Ⅳ
ちょうど建物の正面に身体が向いた時、倉庫の中から一人の男が出てきた。
その倉庫はあたしが出てきた倉庫ではなく、その横に並んでいた倉庫の一つで。
男は背を向けていてあたしには気付いていない。
これはもうあの男に聞くしかないかな?
迷っている暇なんかないし、早くしないと慎が出てくるかもしれない。
よし、決まり!あの男に聞こう!
そう決まるや否や、男に向かって勢いよく走り出す。
「なっ……!?」
足音で気付いたのか、直ぐに後ろを振り返る男。
だけど、男の身体が完全に此方を向くよりも先にあたしの右手が男の右腕を捕らえた。
「………っ!」
左手で男の左肩を掴み、掴んだ右腕を背中に回して捻り上げる。
「答えて。抗争は何処でやってるの?」
「……っ、テメェ誰だ!?」
「言ってる意味が分からない?ど・こ・でやってるの?」
冷静な口調で話しかけながら、掴んでいる手の力をより一層強める。
「……っ、誰かも分からねぇ奴に言うかよ!」
「……チッ」
仕方ないか。
『もう一度聞く。何処でやってる?』
捻り上げている右腕を更に上へと引き上げて、男の耳元でそう囁いた。
すると、男はあたしの声に驚いたのか、今の今まで捩っていた身体をピタリと止め、
「そ、その道を下った所にある工場だよ!」
声を震わせながら、半ば叫ぶ様にそう言った。