Ri.Night Ⅳ
「……何笑ってんだよ」
どうやら顔に出ていたらしい。
ギロリと睨みを利かせる十夜に一瞬怯んだけど、それでもにやけ顔は直らない。
「兎に角、お前は大人しくしてろ。心配させるな」
「……じゃあ一人で行動しないから十夜の隣にいてもいい?」
「………」
「“あたし達”は一対なんでしょ?だからあたしは鳳皇から離れない」
“鳳皇”の隣にいる事が“鳳凰妃”の役目。
“鳳皇”を護る事が“鳳凰妃”の役目。
隣にいなければその役目は果たせない。
けど、それはあたしが思っているだけで。
「十夜は大人しく隣に居てくれるような、そんな鳳凰妃がいい……?」
十夜は遥香さんのような、大人しくて可愛い女の人の方がいいのかもしれない。
「──俺は、自分の事より人の為に一生懸命になれる奴がいい」
え?
「馬鹿で泣き虫で能天気で、男の中に平気で突っ込んで行くような逞しい奴。……で、誰よりも仲間を想ってて愛している奴。
俺の片翼はそんな奴がいい」
「………」
「誰の事か分かるか?」
再びあたしの頬を包み込み、ニッと妖艶に微笑む十夜にキュッと胸が詰まる。
……ズルイ。ズルイよ十夜。
そんな事言うなんて本当にズルイ。