Ri.Night Ⅳ
頭を上げた貴兄は遥香さんから十夜に視線を移し、真剣な眼差しでそう問い掛けた。
「いや、鳳皇へは入れない。遥香には既に護衛をつけていた。それを続行する」
「……そうか。人数は?」
「何人か増やすつもりだ」
十夜、遥香さんに護衛をつけてたんだ。初めて知った。
もしかして、護衛してたのってさっきの二人……?
っていうかあの二人の姿が何処にも見えない。
此処に来てって言ったのに来なかったのだろうか?
「彼女達の事はお前に任せる。──十夜」
「分かってる」
貴兄の言葉を遮った後、十夜は何かを考える様にそっと目を伏せた。
「じゃあ俺等行くわ。落ち着き次第また電話する」
「分かった」
貴兄は十夜と目配せし合った後、あたしの頭を優しく撫でると「じゃあな」と穏やかな笑みを一つ残してお店を出ていった。
去り際、嵐ちゃん達も貴兄と同様笑顔を向けてくれたけど、唯一人、遊大だけは暗い表情を浮かべていた。
「遊大くん……!」
遥香さんもその表情に気付いたのだろう。
困惑を含んだ声で呼び掛ける。
けど、遊大は遥香さんの呼び掛けに立ち止まらず、小さな笑みを残して歩いていった。
遠ざかっていく遊大の背中。
遥香さんはそれを哀しげな瞳で見つめていた。