Ri.Night Ⅳ
「凛音ちゃんただいま」
「壱さん、おかえりなさい」
十夜よりも先に帰ってきたのは壱さんだった。
「凛音ちゃん、遅くなってごめんね」
「ううん、無事に帰ってきてくれて良かった」
出て行く前と変わらず、何事もなかったかのような穏やかな笑顔で帰ってきた壱さん。
「心配させてごめんね」と言ってあたしの頭の上に軽く手を乗せた壱さんは、煌達が居るソファーへと歩いていった。
いつもは癒されるそのキラキラスマイルも、もうすぐ帰ってくる十夜の事を考えると全然トキメかない。
逆に変に鼓動が高鳴って落ち着かなかった。
別に何かしろって訳じゃないんだからそんなに焦らなくてもいいんだけれど。
いつも通りに接したらいい。
いつも通りでいいんだから。
いつも通りで。
心の中で何度も何度もそう自分に言い聞かせた。
心の声が止まったのは、聞き慣れたドアの音が聞こえた時。
「……おかえりなさい」
「ただいま」
ドアから姿を現したのは最愛の人。
部屋に入るなり交わった視線が、心臓を強く刺激する。
数時間前と何ら変わりないその漆黒の瞳が、あたしを容赦なく射抜いた。