Ri.Night Ⅳ

「つ、疲れた……」

「ホントだよ。何やってんのあたし達」


擽り攻撃をし続けたあたし達は数分間でギブアップ。


ゴロンと同時に仰向けになり、大の字でフローリングに転がる。



「凛音」


「ん?」


「俺はアイツの言葉、嘘じゃねぇと思う」


「アイツの言葉?」


「桐谷 十夜が最後に言った言葉」


「……っ、聞こえてたの?」


「あの近さで聞こえねぇ方がおかしいだろ」


確かに。


「お前は……どう思ってる?」


「あたしは……」



嘘じゃないと思ってる。


ううん。嘘じゃないと思いたい。


“あの言葉”は嘘じゃないって。


全部本当だって信じたい。





リビングを去ろうとした時、あたしは十夜に手首を強く引かれた。


そして、コツンと額を合わせた後、言われたんだ。




『泣かせてすまない。……凛音、これだけは信じてくれ。俺が今までお前に言った言葉は嘘じゃない。お前への想いだけは……絶対に』




切なげな声色でそう言われた。


その言葉を聞いた瞬間、過去の言葉が次々と脳裏に甦り、涙がボロボロと滝のように零れ落ちた。


「俺には分からなくてもお前には分かるだろ?」

「………」

「アイツの隣にいたお前なら。アイツの言葉が“真実”かどうか分かる筈だ」


真実……。


「思い出せよ。アイツが言ってた言葉を」


十夜の言ってた言葉……。


そう心の中で呟いた時、優音の手があたしの目元をそっと塞いだ。

急に暗くなる視界。


「アイツは今まで何を言った?」

「………」

「お前にどんな想いを伝えた?」


まるであたしを過去へと導いているかのような優音の言葉。


その言葉にそっと目を閉じ、耳を傾ける。



「“その時”を思い出せよ」



──“その時”


その言葉を聞いた時、脳裏に蘇ったのはあのマンションでの出来事だった。
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