Ri.Night Ⅳ
あの時、十夜の想いは確かにあたしの心に響いた。
あれは偽りなんかじゃない。
泣きそうな表情も、
辛そうに歪んだ表情も、
震えた指先も、
熱い眼差しも、
全部全部本当だった。
あの時の十夜の言葉は決して嘘なんかじゃない
。
伝わったから。
あたしの心に確かに伝わったから。
『逃げるなら好きなだけ逃げろよ。何処までも追い掛けてやる』
──最後に囁かれた言葉も。
『……彼ね、毎日駐輪場に居たんだ。玄関が見える位置で、朝から晩までずっと玄関を見てた』
──管理人のおじさんから聞いた真実も。
『──この日をずっと待ってた。お前が戻ってくるのを……ずっと待ってた』
──鳳皇に戻った時、十夜の腕の中で聞いた言葉も。
『俺も、好きだ。俺の方がお前よりも先に好きだった』
──初めて自分の想いを伝えた時に返ってきた言葉も。
全部全部心に響いた。
あの言葉に偽りなんて存在しない。
そんな軽い言葉じゃないってあたしの心は知っている。