Ri.Night Ⅳ
「……貴音達が受け入れなかったら?」
ハッキリと自分の意思を告げた十夜に煌は一瞬止まったが、直ぐにそう返答する。
「………」
その返答に今度は十夜が言葉を詰まらせた。
「………」
「………」
消えては訪れる、長い長い沈黙。
互いに視線を交わし合い、相手の真意を探る二人。
その静かな攻防に、室内の空気が徐々に研ぎ澄まされていった。
「俺はもうアイツを手放したくない」
先に口を開いたのは十夜で。
揺らぎ無いその声色はさっきと少しも変わらず、
「アイツを手放さない為なら説得でも何でもしてやるよ」
けれど、微かに揺れる十夜の瞳は未だかつてない程の哀しさと苦しみ、そして切なさが滲み出ていた。
十夜はそれを振り切るかのように立ち上がると、右ポケットから携帯を取り出し、「貴音に電話してくる」と言って寝室に向かって歩き出す。
「……アイツの言う通りだな。俺は凛音を哀しませる事しか出来ない」
ドアノブに手を掛けたまま静かに立ち止まった十夜は、そう自嘲気味に零すと振り返る事なく寝室へと消えていった。
「……俺、凛音がいなくなるなんて嫌だ」
重苦しい空気にポツリと落とされたのは陽の弱々しい声。
「折角帰ってきたのにまたいなくなるなんて……、そんなの絶対嫌だっ」
語尾につれて荒々しくなる声は陽の心情を十二分に表していて。
「俺もりっちゃんがいなくなるなんてやだよ……」
他のメンバーの本音もさらけ出させる。