Ri.Night Ⅳ

貴兄の話によると慎達は繁華街へ遊びに行くと言っているらしく、だったら尚更男装の方が都合良いと思うんだけど、慎達が断固として譲らなかったらしい。


まぁ、女でも全然問題無いんだけど。


と言うと語弊があるか。


簡単に言えば、素顔だとNGだけど、女装した姿はOKという意味だ。


理由は至極簡単。


獅鷹時期幹部数人が女を連れている。


それは即ち、獅鷹と関わりが深いという事。


当然そんな女を放っておく筈がない。


他のチームはその正体を即行暴こうとするだろう。


けど、どれだけ目撃されようが、その女を調べられようが、そんな事獅鷹からすればどうでもいい。


だって、獅鷹が弱味を握られる事など有り得ないのだから。


所詮その姿はその日一日だけのもの。


どれだけ調べても何も出てこない。


当たり前だ。

“存在”しないのだから。


貴兄もそれを解っているからこそ女の姿で出歩く事を許したんだと思う。


いくら許して貰えたと言っても不安なモノは不安で。


貴兄や獅鷹の皆に迷惑をかけない為にも、一人で行動するのは絶対やめよう。


いくらイラッ〇マが誘惑してきても一人では行かない。


皆を道連れにして行こう。うん。



そう自己完結した時、丁度タイミングよく信号が青に変わった。


グットタイミン───え?



心の中で小さくガッツポーズしながら右前方へと目を向けた時、あたしは見つけてしまった。


“アイツ”を。



「……っ、優音!待って!」


「は!?」


理由も述べずに思いっきり優音の服を引っ張ると、突然の待ったに急ブレーキをかける優音。


「優音、反対車線のあの先頭の四駆、すぐに追い掛けて!」


けれど、あたしはそんな事お構い無しに指示を出した。


視線はもう反対車線にしか向けられていない。



「は!?なんで!?」


「いいから早く!あの車の助手席にいる奴、遥香さんを攫おうとした奴なの!!」



そう。

反対車線の先頭の車に乗っているのは“あの男”。


Tear Dropで拳を交えた、あの“カイ”という名の男だった。



間違いない。絶対にあの男だ。

あの男に違いない。



あの男が、


“D”が、


直ぐ近くにいる。
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