君がいる毎日
自分のアイスをすっかり食べてしまうと、私は唯月のおでこに手のひらを当ててみた。
熱はなし、と。

唯月は黙々とアイスを食べ、食べ終わると棒を部屋の隅にあるゴミ箱に向かってぽいと投げた。
きれいな放物線を描いて、棒はことりとゴミ箱に入った。

「ふうちゃん」

呼ばれて横を向くと、唯月にキスをされた。
アイスを食べ終えたばかりの唯月の唇は冷たくて、桃の味がする。

「ふうちゃん、みかんの味がする」

「ゆづは桃の味がする」

二人で顔を見合わせて笑って、もう一度キスをした。
今度はもう冷たくなかった。

「その雑誌のことだけど……」

唯月は結婚情報誌に目をやりながら口を開いた。
なんだか唯月らしくない、もごもごした話し方だ。

「なに?」

「……」

「ゆづ?」

「……やっぱ、いい」

唯月は三角座りをすると、膝の間に顔をうずめて頭を抱えた。
髪の隙間からちらりと見える耳たぶが真っ赤で驚いた。

「どうしたの?」

「なんでもない」

唯月は顔を上げずにぶんぶんと頭を横に振る。
どうしたらいいかわからなくて、唯月の頭をなでてみた。

唯月が顔を伏せたまま、腕を伸ばして私を抱き寄せる。
唯月の足の間にすっぽり挟まってじっとしていると、頬に唯月の熱い耳たぶが当たるのを感じた。

「ゆづー。どした?」

「なんでもないよ」

唯月はやっぱり顔を上げようとしない。

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