君がいる毎日
am 11:00
シャワーを浴びてバスルームから出ると、リビングにママの姿はなかった。
ダイニングテーブルの上には『仕事に行ってきます。朝ごはん、食べてね』と書かれたメモと、何故か栗羊羮がふたつ置かれていた。
ママが淹れてくれたコーヒーを飲み、栗羊羮をかじりながら、唯月に髪をセットしてもらった。
栗羊羮は意外にもコーヒーによく合う。
「そう言えばさ、ゆづはなんで美容師になったの?」
慣れた手つきで髪を編み込みながら、唯月は「なんでって?」と聞き返す。
「美容師になった理由。聞いたことなかったなって思って」
「……特にないよ」
なにそれ?
私は思わず振り返った。
「あっ、動いちゃダメだって」
「あ、ごめん」
素直に前を向きながらも私は憮然とする。
「特にないなんてことないでしょ。なにかあるでしょ?」
「……んー、じゃあモテたかったから」
「じゃあってなに? じゃあって。なんだかウソっぽいよ」
「いいじゃん、別に」
「嫌だ、なんか気になる」
「はい、できました」
唯月は私の肩をぽん、と叩いて立ち上がる。
「待って! ちゃんと教えてよ」
唯月のTシャツを掴んで引き留めると、唯月は自分の頭をがしがしとかいてため息をついた。
「ため息! ため息ついたでしょ、今!」
Tシャツをひっぱって抗議の声をあげても、唯月は黙ったままだ。
「ゆづ?」
唯月の正面に回って目が合うと、唯月は困ったように眉にしわを寄せていた。
「……なんかごめん。そんなに言いたくないとは思わなくて」
唯月にだって、きっと秘密にしておきたいことくらいあるんだ。
そんな当たり前の事実を私はついうっかり忘れてしまう。
唯月が優しいから。
私はいつもそれに甘えてしまう。
ダイニングテーブルの上には『仕事に行ってきます。朝ごはん、食べてね』と書かれたメモと、何故か栗羊羮がふたつ置かれていた。
ママが淹れてくれたコーヒーを飲み、栗羊羮をかじりながら、唯月に髪をセットしてもらった。
栗羊羮は意外にもコーヒーによく合う。
「そう言えばさ、ゆづはなんで美容師になったの?」
慣れた手つきで髪を編み込みながら、唯月は「なんでって?」と聞き返す。
「美容師になった理由。聞いたことなかったなって思って」
「……特にないよ」
なにそれ?
私は思わず振り返った。
「あっ、動いちゃダメだって」
「あ、ごめん」
素直に前を向きながらも私は憮然とする。
「特にないなんてことないでしょ。なにかあるでしょ?」
「……んー、じゃあモテたかったから」
「じゃあってなに? じゃあって。なんだかウソっぽいよ」
「いいじゃん、別に」
「嫌だ、なんか気になる」
「はい、できました」
唯月は私の肩をぽん、と叩いて立ち上がる。
「待って! ちゃんと教えてよ」
唯月のTシャツを掴んで引き留めると、唯月は自分の頭をがしがしとかいてため息をついた。
「ため息! ため息ついたでしょ、今!」
Tシャツをひっぱって抗議の声をあげても、唯月は黙ったままだ。
「ゆづ?」
唯月の正面に回って目が合うと、唯月は困ったように眉にしわを寄せていた。
「……なんかごめん。そんなに言いたくないとは思わなくて」
唯月にだって、きっと秘密にしておきたいことくらいあるんだ。
そんな当たり前の事実を私はついうっかり忘れてしまう。
唯月が優しいから。
私はいつもそれに甘えてしまう。