君がいる毎日
「……ふうちゃんさ」

うつむいていると、唯月が私の頭を優しくなでた。

「美容院、嫌いだろ?」

「……うん」

「顔に載せられるガーゼとか」

「うん」

「意味のない美容師とのトークとか」

「うん」

「頼んでもないのにマッサージされるのとか」

「うん」

「……だからだよ」

「へっ?」

見上げると、苦笑いをした唯月と目があった。
唯月は私の両頬をむにっとゆるくつねって、「だからだよ」と、繰り返す。

「私が美容院を嫌いだから、美容師になったの? どういうこと? 意味がわからないんですけど。それに痛い」

「分からなくていいよ。でも、ふうちゃんの髪はこれからもずっと俺に切らせて。俺、美容師だから」

なんだかよく分からないまま、私はうなづいた。
うなづいたと同時に唯月にキスされて、その瞬間、さっき胸に吹いたすきま風がどっかに消えていくのを感じた。

いつもこうだ。
唯月のキスは魔法のキス。

こうやって、私は何回でも唯月に守られて癒されて救われて生きていくのだろう。
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