君がいる毎日
pm 12:00
「栗羊羮じゃ朝ごはんにならない」

クローゼットから服を選びながらぼやいた私のひとりごとを、唯月はちゃんと聞いていて、「確かに」と笑う。

「加奈さんち行くの、一時だろ? 途中で昼ごはん食べよ」

「さんせー、さんせー」

唯月の提案に心を弾ませながら、取り出したボーダーのワンピースに着替える。

一度帰って着替えてきた唯月と、マンションの駐車場に向かいながら空を見上げると、もうすっかり夏の空だ。

「ふうちゃん、なに食べたい?」

「栗羊羮以外」

助手席に乗り込むと、もわっと暑い空気が体にまとわりつく。

エアコンをつけながら、運転席の唯月は「りょーかい」と笑った。

二十分ほど走って、唯月が車をとめたのはゴルフ場の横にあるベーカリーカフェだった。
車から降りると、パンの焼けるいい香りが駐車場まで漂ってきていた。

店内で選んだパンを、外のテラス席で食べられるようになっている。
どれも美味しそうで私が悩んでいると、唯月は私が見ていたパンを次々に買ってレジに向かう。

「アイスコーヒーと、ふうちゃんはココア?」

注文をしながら振り向いた唯月に私はうなづいて見せる。

床やテーブルが全て木でできたテラス席に座ると、ゴルフのコースが見渡せてとても気持ちがいい。
どこまでも緑で、まるで遠くに来たみたいだ。
風があるせいか涼しくて、パンと木のいい香りもする。


「この店、お客さんから聞いて知ったんだけど。ふうちゃんの気に入りそうだったから」


目の前でブラックのアイスコーヒーをごくごくと飲んでいる唯月を見ながら、私は思う。
唯月はやっぱりすごい。
だって、私はこのお店が本当に気に入ったもの。
< 8 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop