月夜に散歩
極彩の海─潜水─
 蒼穹を渡る海鳥の真ん中に立ち、風の囁きを耳にする

 銀のさかなに弾かれて、太陽が零す煌きにさよならを


 浮かび上がる真白な綿毛が、新緑の季節を呼び起こす

 それはきれいな、きれいだった、セピアの残像


 遠く霞む記憶の中の、茶色にひび割れた地上で、嘆きの声が聞こえたんだ

 無声の悲鳴に両手で耳を塞ぎ、逃げたぼくらは紺碧へと散る


 頭上に撒かれた極彩色の、艶やかな時間は遥か遠く
 
 吐き出した泡沫に罪を閉じ込めて、群青色に沈みゆく


 色のない遊泳に意味はないと、醜い深海魚が告げる

 贖罪を叫ぶぼくらの声は、煤けた水音にかき消された


 遠く霞む記憶の中の、茶色にひび割れた地上で、嘆きの声が聞こえたんだ

 無声の悲鳴に振り返れば、天色の夢に手を伸ばすのを赦された


 嗚呼、それでも毟られた翼は戻らない

 ぼくらは乾いた海の底から、鮮やかに揺れる景色に焦がれるだけ







【極彩の海】

 テーマ 『潜水』




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