猫柳の咲く季節に


ガラスの扉を開ければ、そこにあるのは静寂の世界。


ただ、時々風が吹く音がするだけ。


「…実はね、入谷くんが好きだったのは、なんとなく分かってたんだ」


小石を蹴り飛ばして、そうつぶやく。


「……うそ!?え、いつ!?」


希美ちゃんの大きな驚き声びっくりして、思わず頭を向ける。


「でも、最近だよ。今日とか昨日…このうわさが起きてから」


「そうなんだ…なんか、恥ずかしいね」


はにかんで笑う照れ顔は、希美ちゃんそのもの。


今までよりずっと自分らしさが出ているような、そんな表情。

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