猫柳の咲く季節に


「良い意味でだよ。明るく元気な姿は、あのころのままだし、悩みがなさそうなところもすごく羨ましい」


淡々とそう述べる柏木を見ていると、なんだかしおりを思い出す。


優しい雰囲気が、似ているのかもしれない。


だけど、『悩みがなさそう』という言葉には、頷くことは出来ない。


「…私だって、悩みくらいあるよ」


ぎしぎしと音を立てるベンチは、ある意味で今の私のようだった。

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