猫柳の咲く季節に


「力に、なりたいんだよ…永瀬さんに、話を聞いてもらったあのときから、俺は少し、気分が楽になったんだ。だからこそ、思うんだ…永瀬さんに、なんか、恩返しが出来たらな、って…」


つっかえながらも、ゆっくりと話してくれた、柏木くんの思い。


それは、柏木くんらしい、優しいものだった。


「話したくないなら、話さなくてもいいよ…でも、話して、永瀬さんの気が楽になるようなことなら、いつでも聞くから」


自分の顔が涙でぐちゃぐちゃになっているのに、私の涙をそっと拭ってくれた。


その手は、大きくて、暖かくて、彼になら全てを預けてみたいってどこかで思ってしまったんだ。

< 357 / 514 >

この作品をシェア

pagetop