猫柳の咲く季節に
「でさー、しおりも来てくれてねー!」
ふと、扉の向こうに耳を傾けると、希美ちゃんの声がする。
千鶴さんと一緒に誰かを連れてきたのかもしれない。
「あ!おはよ、永瀬さん」
やっぱり入谷くんだったんだ、と安堵の表情を浮かべて、小さく手を振る彼に同じように振り返す。
そのあと、入谷くんが目先を変えたとき、その表情も暗く変わった。
「………っ!」
声にならない叫びをあげて、無理やりそこから視線を変える。