猫柳の咲く季節に


だけど、そんな疑問は、この何枚も重なった毛布を見れば、全て吹き飛んだ。


きっと、なにか事情があって、家で飼えないだけなのかもしれない。


こんなにも、丁寧に世話されているんだから。


不安も心配も、ないって言ったらウソになるけど、それよりも、信頼のほうが何倍も大きかった。


それから、数ヶ月。


父親の帰りがだんだんと遅くなっていくにつれて、1人でいる時間が多くなった。


家に帰っても、明るく照らしてくれるのは、家族の笑顔なんかじゃなく、ただの電気。


そんな生活が、すごく苦しくて、寂しくて。


だけど、学校ではそんな姿を見せないようにしていた。


伊月や希美、クラスのみんなに心配をかけたくなかったから。

< 428 / 514 >

この作品をシェア

pagetop