猫柳の咲く季節に
「…新山さんのことも、忘れてません。いや、忘れるつもりはありません」
「え、なに?」
「あんなにも優しかった彼女が、すごく苦しんでいました。なのに、千鶴さんまで…」
誰かに強く言い張るのは、苦手。
だから、言葉がどんどん小さくなってしまう。
なのに、目の前の佐川さんは、そんな私を見て、ぷっと吹き出して笑った。
「な、なんですか…!」
「へえ、なにも知らないんだ」
にやり、と笑いながら、席を立ち、私に近づいてくる。
怖くて後ずさりする私に、再び口を開いた。