猫柳の咲く季節に


「…新山さんのことも、忘れてません。いや、忘れるつもりはありません」


「え、なに?」


「あんなにも優しかった彼女が、すごく苦しんでいました。なのに、千鶴さんまで…」


誰かに強く言い張るのは、苦手。


だから、言葉がどんどん小さくなってしまう。


なのに、目の前の佐川さんは、そんな私を見て、ぷっと吹き出して笑った。


「な、なんですか…!」


「へえ、なにも知らないんだ」


にやり、と笑いながら、席を立ち、私に近づいてくる。


怖くて後ずさりする私に、再び口を開いた。

< 442 / 514 >

この作品をシェア

pagetop