猫柳の咲く季節に
「すみませーん!通りまーすっ」
どこからか、そんな声が聞こえ、私は出来る限り端っこに寄る。
この騒がしさにほかの人は聞こえていないのか、 声の主は一向に近づいてこない。
大丈夫かな…
私は、声のした方を見回す。
「……っあ、永瀬!」
その人は、入谷くんだった。
私と目が合った瞬間、大きく手を振っている。
「通してくださーい!」
なんとか、人混みを抜けてきた入谷くんは私の前で止まった。
「やっと来れたー!ははっ、なんて」
笑顔でため息をついている。