強引社長の不器用な溺愛
プロローグ
深夜のオフィスだった。
フロアの電気は半分消され、私と彼のいるデスク付近だけが妙に明るい。
私の腰は彼のデスクに当たっていた。
逃げ場はないのだと思う。現に私の頬に触れた彼の大きなてのひらは、意志的にぴたりと吸い付いている。
唇同士が一度触れ合った。まるで、確認するみたい。
これから何をするか。してもいいのか。
唇はすぐに離れた。
「篠井(しのい)、もうちょっと口開けて」
低くかすれた声が言った。
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