強引社長の不器用な溺愛
パッケージングする行程は、篠井が面白そうに見ていた。
形の崩れやすいキノコは人の手でパッケージングするそうだ。
ずらりと並んだパート職員の女性たちを見守っている。

たぶん、篠井のことだから、『私もやってみたい』とか『私ならあの行程は簡略化できる』とか無駄にアクティブなことを考えてるんだろうな。

下手にデキル女だと大変だな、脳が忙しくて。

B棟端のラボに移動すると、今回のサプリメントを開発した研究グループのメンバーと挨拶をした。
開発責任者の清塚(きよづか)さんという男性は俺と同じくらいの年に見える。

責任者という割、若い。
しかも、メガネをかけているけれど、結構なイケメンじゃねーか。
おいおい、賢くってイケメンで責任者って何?


「本日は遠路遥々お越しくださいましてありがとうございます」


声も涼やかで、落ち着いている。これ、モテるんだろうな。羨ましいかぎり。
よし、俺の中では”ハイスペックくん”で決定。

無駄なことを考えつつ挨拶をする。


「こちらこそ、よろしくお願いいたします」


名刺交換し、一礼する。
横で篠井が、にこやかに微笑んでいた。

打ち合わせは行方さんと清塚さんを交えて行われた。
大まかな営業戦略や、今後のスケジュール的な部分は、篠井が敬三さんからレクチャーを受けている。
安野産業の方針を伝えるのは篠井の役目だった。

俺はデザインのコンセプトやら、宣材写真のスケジュールやら、いつものノリで営業しただけ。
あー、ホント、篠井がいるとラクだわ。
やっぱ、敬三さんの言う通り、連れてきてよかった。
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