強引社長の不器用な溺愛
俺たちはタクシーで昼食を摂ったレストランに直接乗りつけた。

地方の名士たちが集まって……みたいな会合を想像していたけれど、パーティー自体は随分アットホームなものだった。

役付きの社員に、取引先関係者が主な出席者。
会議の延長みたいな通常のスーツ姿で、ワインを片手に談笑する姿は、社員旅行にでも来たかというくらいくだけた雰囲気だ。
サンタに扮した社長と飛びつくお孫さんの光景もほのぼのとしている。

俺は早々に関係先すべてに挨拶周りを済ませた。
こういうの得意なんだよな。
知らない人間だらけのところで、場を盛り上げるのって。

俺は“東京から来た新プロジェクトの協力者”という体で、あっさりと場になじんだ。

会が始まって30分以上経った頃だ。


「あ、おばあちゃん!」


社長のお孫さんが駆けていった先には、どうやら今回の敵である副社長の姿。

派手なパーマのかけられたショートの髪と、一目でハイブランドのものとわかるスーツ。
きつそうな釣り目で周囲を睥睨している。
パーティーにも遅れて登場するわけね。ふーん。

その横にいる50代後半と思しき夫妻がいる。
男の方がクリエイターズフォレストの常務だろう。
腰ぎんちゃくみたいに40代らしき部下が控えている。

部下連れてきて、どこがプライベートだよ。
どうやら、あちらさん、安野産業とうちからこの仕事を持っていく気満々だ。

まあ、引かないけど、こっちも。
< 108 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop