強引社長の不器用な溺愛
俺が面倒な反体制派を丸め込み、篠井が反体制派と協力者を接触させないよう隔てる。

上手くすれば俺が反体制派の副社長を取り込めるし、駄目でも足止めになる。
篠井の方は、賛成派を繋ぎとめる役割だ。

結果として、この案は成功した。

俺は副社長のオバアチャマと1時間語りつくし、最後は彼女が笑顔を見せざるを得ないところまで話術で落とした。
行方さんが隣に貼り付き、適度なパスをくれるのもラッキーだった。

篠井の方は、社長と清塚さんにべったりで、概ね社長の成功譚の聞き役に徹していたようだ。
社長はすっかりいい気分で、お孫さんもそっちのけで篠井に語り続けていたらしい。

クリエイターズフォレストの常務夫妻はパーティーの間中、社長に接近できなかった様子だ。

ま、こんなのは一時しのぎに過ぎないけど、今日の仕事としては上々。
一応、この場でできる最善は尽くした。


ひとつだけ気になることがある。
仕事とはまったく関係ないけど。


清塚さんが篠井のことをだいぶじっくり見つめていた。

口数の多い方ではないメガネのイケメンくんは、どうやら篠井絹に心を動かされている。
篠井が社長と話している時も、ずっと篠井の右隣にいる。

その姿は時に目の端に映った。
社長の大きな背中の向こうに、篠井と隣に寄り添う清塚さん。

おいおいおい、火ぃついちゃったんじゃねーの？

いや、俺は応援するつもりですよ？
篠井がその気なら。
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