強引社長の不器用な溺愛
そういえば、俺の横で副社長トークの補佐をしてくれていた行方さんに、清塚さんのこと聞きそびれた。

でも、それに気づいた時、会は終わっていて行方さんはすでに社長のそばだ。

アプローチに出ると招待客は、家族の迎えやタクシーに乗り込み帰って行く。
運転代行業者の車も何台かいる。
俺と篠井が乗るタクシーもすでに手配されて到着済みだ。

俺は、篠井の姿を探す。
化粧室に行ったと思ったけど、遅いな。

雪のそぼ降るアプローチを戻り、レストラン内を覗く。

やっと見つけた篠井はまだレストランのエントランスホールにいた。
その前に立っている背の高い男……清塚さんだ。

清塚さんは篠井の手に何かを握らせている。

おーっと、あれはオールドスタイルにも自分の連絡先だったり?

やるな!理系男子!
つか、メールアプリのID交換すりゃいいじゃん。

清塚さんは遠目に見ても赤い頬をしていて、応ずる篠井の笑顔も明るい。

マジっすか。
恋、生まれちゃった?

はー、一瞬だな、こりゃ。
若いっていいな!

……そうだ、そういうことなら、邪魔はしちゃまずい。

俺は先にタクシーに乗り込み、中で篠井を待った。
しかし、妙にそわそわと落ち着かない。
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